定義工事進行基準とは、工事が完成する前でも、その期に進んだ分だけ売上と原価を計上する考え方。完成まで売上を立てない工事完成基準と対になる。計算式当期計上売上=工事収益総額×進捗度。進捗度は、発生原価÷見積総原価で求める原価比例法が一般的。扱い2021年4月以後開始の事業年度から収益認識基準(企業会計基準第29号)が強制適用され、上場企業等の工事進行基準は廃止。考え方は「一定の期間にわたり充足される履行義務」に引き継がれた。中小企業は法人税法に基づく従来処理も任意で継続できる。
工事進行基準とは — 進捗度に応じて売上を計上する考え方
工事進行基準とは、工事が完成する前でも、その期に進んだ分だけ売上と原価を計上する考え方です。長期にわたる工事やシステム開発では、着工から完成・引き渡しまで何年もかかることがあります。完成したときにまとめて売上を立てる工事完成基準だと、その間の期は売上がゼロのまま原価だけが積み上がり、完成した期に一気に売上が立つため、年度ごとの業績が実態とずれてデコボコします。
工事進行基準は、進んだ分を毎期計上するので、各期の損益が「その期にどれだけ仕事をしたか」に近づきます。だから、長期案件を抱える受託・建設・開発業では、案件別の採算をリアルタイムに近く把握するための基本になる考え方です。
2021年4月以後開始する事業年度から収益認識基準(企業会計基準第29号)が強制適用され、上場企業などでは工事進行基準・工事完成基準という名称の基準は使われなくなりました。ただし、進行基準の発想は「一定の期間にわたり充足される履行義務」として新基準に引き継がれています。中小企業は新基準の適用が任意で、法人税法に残る従来処理も認められています。
なぜ重要か/よくある誤解
最大の誤解は、工事進行基準は廃止されたから関係ない、と考えることです。たしかに上場企業では基準の名称としては姿を消しましたが、「進捗に応じて売上を認識する」という発想そのものは、収益認識基準のなかに「一定の期間にわたり充足される履行義務」として明確に残っています。むしろ、長期案件の採算管理という実務上の必要性は何も変わっていません。
もう一つの誤解は、進捗度を「期間の経過」で測ろうとすることです。会計上の進捗度は、原則として原価比例法(発生原価÷見積総原価)で測ります。見積総原価が甘いと進捗度がゆがみ、計上売上も実態とずれます。進行基準を使うほど、原価の見積もりと実績管理の精度が採算の正しさを左右します。
計算式と具体例
| 項目 | 式 |
|---|---|
| 進捗度(原価比例法) | 発生原価 ÷ 見積総原価 |
| 累計計上売上 | 工事収益総額 × 進捗度 |
| 当期計上売上 | 累計計上売上 − 前期までの計上売上 |
たとえば工事収益総額1億円・見積総原価8,000万円の案件で、当期末までに発生した原価が4,000万円だとします。進捗度は4,000万円÷8,000万円=50%。累計で計上できる売上は1億円×50%=5,000万円です。前期までに2,000万円を計上済みなら、当期計上売上は5,000万円−2,000万円=3,000万円となります。
なお、進捗度を合理的に見積れない場合は、回収が見込める発生原価の分だけ売上を立てる原価回収基準で処理します。利益はまだ乗せず、原価=売上として、損も得も出さない計上の仕方です。
自社に実装するには
工事進行基準を実務で使う鍵は、案件ごとに「発生原価」と「見積総原価」を正しく追えることです。会社全体の数字だけでは進捗度は計算できません。どの案件に、いつ、いくらの原価(外注費・労務費・材料費など)が紐づいたかを案件単位で記録し、見積総原価を随時見直して初めて、進捗度と採算が正しく見えます。この案件単位の設計は、何にいくらのコストが紐づいているかを洗い出す業務棚卸しから始まります。
工事進行基準を「案件別の発生原価と見積総原価」で追えると、進捗と採算が同時に見えます。無料診断で見える化の起点を洗い出せます。
よくある質問
工事進行基準と工事完成基準はどう違いますか?
工事進行基準の進捗度はどう計算しますか?
工事進行基準は廃止されたのですか?
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