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飲食・多店舗の「店舗別の黒字ラインが見えない」を直す

飲食・多店舗で店舗ごとの採算が見えなくなる原因を、FL原価(食材+人件費)・本部費の店舗配賦・損益分岐稼働の3点から解説。食堂・レストランは売上原価+人件費で売上の約76%、損益分岐点比率は平均133%(日本政策金融公庫)。業界平均との比較と直し方を具体化。

この記事の目次
  1. 飲食・多店舗で「店舗別の黒字ライン」が見えなくなる理由
  2. 業界平均ベンチマーク — 自社の位置を測る
  3. 見るべき採算単位とKPI
  4. 原価・配賦・収益認識の論点
  5. SaaS・ツールだけでは届かない理由
  6. AI管理会計ビルダーでの解き方
  7. よくある質問
  8. 関連リンク
  9. 出典
この記事の要点AI / AEO 最適化
  • Q1飲食・多店舗で店舗別の黒字ラインが見えなくなる主因は、店舗ごとにFL(食材+人件費)と家賃が違ううえ、本部費(販促・セントラルキッチン・本社管理)をどの基準で店舗に配賦するかが決まっていないこと。全社の損益では、どの店が稼ぎ、どの店が足を引っ張っているかが分からない。
  • Q2食堂・レストランの業界平均は、売上原価率(食材費)約37%+人件費率約40%でFL相当が売上の約76%を占め、損益分岐点比率は平均133%(日本政策金融公庫2023年度調査)。平均的な店は損益分岐点を超えた水準=採算ぎりぎりか赤字寄りで、FLと固定費のコントロールが採算を直接左右する。
  • Q3見るべき採算単位は店舗別・時間帯別で、KPIはFLコスト率・客単価×回転・損益分岐稼働。日次の売上計上に加え、前受(食事券・予約金)やポイントの扱いも収益認識の論点になる。店舗別に原価と固定費を分けて初めて、出店・撤退・値づけの判断ができる。
  • Q4直し方は、採算単位を店舗(必要なら時間帯)に固定し、FL→固定費→本部費配賦の順で組み立てること。POS・シフト・仕入が別々のシステムに分かれている飲食では、まず業務棚卸しで配賦の土台をつくってから運用に乗せると、店舗別の黒字ラインが安定して見える。

飲食・多店舗で「店舗別の黒字ライン」が見えなくなる理由

店舗を増やしてきた飲食の会社で「全社では回っているが、どの店が黒字で、どの店が足を引っ張っているのか曖昧」という状態は、構造的に起きやすいものです。理由は、店舗ごとにFL(食材費+人件費)と固定費が違ううえ、本部費を各店にどう割り振るかが決まっていないからです。

飲食の損益は、食材費(Food)と人件費(Labor)という売上に連動しやすい費用に、家賃・減価償却という固定費が乗り、さらに販促・セントラルキッチン・本社管理といった本部費が重なります。FLは店舗の立地や業態、シフトの組み方で大きく変わり、本部費はそもそもどの店の負担なのかが直接は見えません。だから全社の損益を眺めても、店舗ごとの採算は出てきません。

しかも飲食では、売上はPOS、人件費はシフト管理、食材は仕入システムと、データが別々の場所に分かれていることがほとんどです。店舗別の採算管理は、これらを店舗という単位でつなぎ直し、FL・固定費・本部費を店舗に配賦するところから始まります。

日本政策金融公庫の調査によると、食堂・レストランは売上高総利益率が63.2%で、裏を返せば食材費が売上の約37%を占めます。これに人件費率39.5%を合わせると、FL相当が売上の約76%にのぼります。さらに損益分岐点比率は平均133.0%で、平均的な店は損益分岐点を超えた水準、つまり採算がぎりぎりか赤字寄りにあることを示します。FLと固定費を店舗ごとにコントロールできるかどうかが、そのまま採算の見えやすさを決めます。

出典日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(2023年度調査・飲食店・宿泊業)

業界平均ベンチマーク — 自社の位置を測る

飲食の採算を考えるとき、まず手元の数字を業界平均と並べてみると、論点が一気に具体的になります。下表は食堂・レストランの市場規模と業界平均です。自店の値を入れて比べる出発点として使ってください。

業界平均ベンチマーク(食堂・レストラン)

出典:日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(2023年度調査・飲食店,宿泊業)/食堂・レストラン327社の平均値。カッコ内は黒字かつ自己資本プラス企業の平均。市場規模は日本フードサービス協会 外食産業市場規模推計(2023年)。自社値は自社の決算・店舗データから記入。

業界平均ベンチマーク(食堂・レストラン)
指標自社値業界平均出典
外食産業 市場規模24兆1,512億円(2023年・前年比+20.2%)日本フードサービス協会 外食産業市場規模推計
売上高総利益率(食材費を引いた粗利)63.2%(黒字企業 65.6%)日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(2023年度調査)
人件費対売上高比率(FLのL)39.5%(黒字企業 36.1%)日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(2023年度調査)
売上高営業利益率-18.4%(黒字企業 4.9%)日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(2023年度調査)
損益分岐点比率133.0%(黒字企業 116.7%)日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(2023年度調査)

この表で特に見てほしいのは、損益分岐点比率と人件費率です。業界平均の損益分岐点比率は133.0%で、平均的な店は損益分岐点を大きく超えた水準にあります。一方で黒字企業の平均は116.7%まで下がります。両者を分けているのは、売上を一気に増やす力よりも、店舗ごとのFLコントロールと固定費・本部費の配賦設計です。売上高営業利益率も平均はマイナス18.4%に対し黒字企業は4.9%と、ここでもFLと固定費の使い方が採算を左右しています。

外食産業全体の市場規模は2023年で24兆1,512億円(前年比+20.2%)まで回復しており、需要は戻っています。だからこそ、伸びる売上を店舗別の利益に変えられるかどうかが、多店舗経営の分かれ目になります。

見るべき採算単位とKPI

飲食・多店舗で採算を見える化するときの基本単位は、店舗別です。さらに必要に応じて時間帯別まで下ろすと、ピーク/アイドルタイムの採算が見えます。

採算単位 何を見るか 使いどころ
店舗別 店舗ごとの売上・FL・固定費・本部費配賦後の営業利益 黒字店/赤字店の判別、出店・撤退判断
時間帯別 ランチ/ディナー/アイドルタイムの売上と人件費 シフト最適化、時間帯メニューの設計
メニュー・商品別 商品ごとの原価率と数量、貢献度 値づけ・メニュー改廃、ロス削減
業態・ブランド別 業態ごとの損益分岐稼働と投資回収 業態展開の意思決定

KPIとしては、FLコスト率、客単価×回転(席数・回転率)、損益分岐売上・損益分岐稼働、店舗別営業利益が中心になります。いずれも「店舗にFLと固定費を紐づける」ことが前提で、ここが飲食の採算管理の土台です(採算ラインの考え方は損益分岐点とはを参照)。

原価・配賦・収益認識の論点

飲食の採算を組み立てるとき、避けて通れない3つの論点があります。

1. FL原価を店舗別にそろえる。食材費は仕入システム、人件費はシフト・勤怠から取れますが、これを店舗単位で売上に対応させて初めてFLコスト率が出ます。食材ロスや仕込みの偏り、シフト過多も、店舗別に見て初めて改善余地が分かります。

2. 本部費・固定費の配賦。家賃・水道光熱費は店舗に直課できますが、販促費、セントラルキッチン原価、本社管理費は特定の店に直接ひもづきません。これらは共通費としてまとめ、売上比・席数比・来店客数比など一定の基準で各店へ配賦します。重要なのは、一度決めた配賦基準を頻繁に変えないこと。基準を変えると店舗間・期間間の比較ができなくなります(配賦の基本は配賦とはを参照)。

3. 収益認識。飲食は日次の売上計上が基本ですが、前受(食事券・回数券・予約金)やポイントは収益認識の論点になります。収益認識会計基準では、未使用の食事券やポイントは将来の提供義務に対応する分を繰り延べる扱いになりえます。これを織り込まないと、見かけの売上と実際に確定する収益がずれます。

FLと固定費を店舗別に分け、本部費を配賦したうえで店舗別の営業利益を出すと、初めて「どの店が本部コストも含めて黒字なのか」が見えます。日本政策金融公庫の調査で食堂・レストランの損益分岐点比率が平均133.0%、黒字企業でも116.7%という水準は、店舗別に損益分岐稼働を把握し、固定費を吸収できているかを管理することが採算の前提であることを示しています。

出典一般社団法人日本フードサービス協会 外食産業市場規模推計(2023年)

SaaS・ツールだけでは届かない理由

「POSやシフト管理、店舗管理SaaSを入れれば解決する」と考えがちですが、ツール導入だけで店舗別の黒字ラインが見えるようになるとは限りません。多くの飲食向けツールは、原価の集計単位・配賦の基準があらかじめ整っている前提で設計されています。

実際には、売上はPOS、人件費はシフト、食材は仕入と、データが別々の場所に分かれています。本部費やセントラルキッチン原価をどの基準で各店に配賦するかは、店舗構成や業態ごとに作り込みが必要です。自社の採算単位(店舗・時間帯)と配賦基準を先に設計しないままツールを入れると、テンプレートに業務を無理に合わせることになり、出てくる数字が実態からずれます。順序は「まず業務棚卸しでFLと本部費配賦の土台をつくる→その構造を崩さずにツール運用へ乗せる」です。

AI管理会計ビルダーでの解き方

AI管理会計ビルダーは、この「採算単位の設計→FLと固定費の集計→本部費配賦→運用」という前工程を、AIで圧縮して支援します。まず業務を棚卸しして、店舗・時間帯・業態のどの単位で採算を見るかを会社固有に設計し、POS・シフト・仕入のデータを店舗単位でつなぎ、本部費を配賦する仕組みをデータ基盤から構築します。ツールのテンプレートに会社を合わせるのではなく、会社の店舗構造に合わせて管理会計をつくる。だから、データが分散・未整備な状態からでも、店舗別の黒字ラインの見える化を始められます。

まずは自社の店舗別採算が「どこで見えなくなっているか」を可視化することから。無料診断で、FLと本部費配賦の起点になる論点を洗い出せます。

よくある質問

なぜ多店舗の飲食店は店舗ごとの利益が見えにくいのですか?
店舗ごとにFL(食材費+人件費)と家賃などの固定費が違ううえ、本部費(販促、セントラルキッチン、本社管理)を各店にどう割り振るかが決まっていないことが多いからです。POS(売上)、シフト(人件費)、仕入(食材)が別々のシステムに分かれていると、店舗単位で原価と固定費を突き合わせること自体が手間で、結果として全社の損益しか見えません。日本政策金融公庫の調査でも食堂・レストランは売上原価と人件費で売上の約76%を占め、損益分岐点比率は平均133%と採算がぎりぎりの業種で、店舗別の見える化が経営判断の前提になります。
店舗別の採算を出すには、まず何から手をつけるべきですか?
採算を見る単位を「店舗」に固定することから始めます。次に、各店のFL(食材費と人件費)を売上に紐づけ、家賃・水道光熱費などの固定費を店舗ごとに集計します。本部費は、特定の店に直接ひもづかないので、売上比や席数比など一定の基準で各店へ配賦します。最初から精緻にせず、まずFLと家賃という大きな費目を店舗別にそろえ、そのうえで本部費の配賦を加えていくと続けやすくなります。
FLコスト率はどのくらいを目安にすればよいですか?
FLコスト率は食材費(Food)と人件費(Labor)の合計が売上に占める割合で、一般に60%前後が一つの目安とされます。一方で日本政策金融公庫の2023年度調査では、食堂・レストランの売上原価率は約37%、人件費率は約40%で、平均的にはFL相当が売上の約76%にのぼります。平均値は損益分岐点を超えた水準を含むため、自店のFLを業界平均と並べたうえで、食材ロス・仕込み・シフトのどこに改善余地があるかを店舗ごとに見ていくのが実務的です。
本部費(本社費)は店舗にどう配賦すればよいですか?
本部費は特定の店舗に直接ひもづかない共通費なので、一定の配賦基準で各店に割り振ります。基準には売上比、席数比、来店客数比などがあり、何を負担の実態に近い基準とするかを最初に決めます。重要なのは、一度決めた配賦基準を頻繁に変えないことです。基準を変えると店舗間・期間間の比較ができなくなります。配賦後の店舗別営業利益まで出して初めて、本部のコストも含めた「店舗の本当の採算」が見えます。
POSやシフト管理のツールを入れれば、店舗別利益は見えるようになりますか?
ツールは有効ですが、それだけでは解決しないことが多いです。多くの飲食向けツールは、原価の集計単位や配賦の基準があらかじめ整っている前提で設計されています。実際にはPOS(売上)、シフト(人件費)、仕入(食材)が別々で、本部費やセントラルキッチン原価の配賦は店舗構成ごとに作り込みが必要です。自社の採算単位(店舗・時間帯)と配賦基準を先に設計しないままツールを入れると、出てくる数字が実態とずれます。まず業務棚卸しで土台を固めてから運用に乗せる順序が有効です。