ガイド

人材派遣の稼働率と契約別・稼働者別採算の出し方

人材派遣・BPOの契約別・稼働者別の粗利を、稼働率の算出(稼働時間÷総労働時間)→稼働者人件費の契約配賦→待機コストの別建て→契約別粗利の算出まで計算例つきで解説。派遣料金は8時間換算で平均26,257円・賃金16,735円(厚労省・令和6年度)。

この記事の目次
  1. このガイドの位置づけ — 契約別・稼働者別の粗利を「計算する手順」
  2. 契約別・稼働者別の粗利を出す4ステップ
  3. ステップ1|稼働率を算出する(稼働時間÷総労働時間)
  4. ステップ2|稼働者人件費を契約別に配賦する
  5. ステップ3|待機(ベンチ)コストを別建てで見える化する
  6. ステップ4|契約別・稼働者別の粗利を確定する
  7. 計算手順を算式で押さえる
  8. 計算例|2契約に関わる稼働者の採算を組み立てる
  9. つまずきやすいポイント
  10. Excel・手作業の限界と、その先
  11. AI管理会計ビルダーでの解き方
  12. よくある質問
  13. 関連リンク
  14. 出典
この記事の要点AI / AEO 最適化
  • Q1契約別・稼働者別の粗利は、稼働率の算出→稼働者人件費の契約配賦→待機(ベンチ)コストの別建て→契約別・稼働者別粗利の算出、という4ステップで組み立てる。原価の正体が人件費なので、稼働時間を契約に紐づけない限り採算は出ない。
  • Q2稼働率=請求できる稼働時間÷総労働時間。総労働時間には待機時間も含むため、稼働率が下がるほど、給与という固定費を回収できない待機が増えている、という読み方ができる。
  • Q3待機(ベンチ)コストは契約にひもづかない稼働者の人件費。契約別の原価とは別建てで金額を見える化する。無期雇用は契約が途切れても賃金が出るため、これを隠すと全社で利益が残らない理由が説明できない。
  • Q4採用・営業・管理部門の人件費は契約に直課できない間接費。直接稼働時間比や人数比などの基準で契約へ配賦する。基準は一度決めたら頻繁に変えず、契約間・期間間の比較を保つ。

このガイドの位置づけ — 契約別・稼働者別の粗利を「計算する手順」

人材派遣・BPOで契約別・稼働者別の利益が見えなくなる構造的な理由や、業界平均との比較は人材派遣・労働集約サービスの「稼働者ごとの採算が見えない」を直すにまとめています。稼働率という指標そのものの定義・適正な目安は稼働率とはに、事業・契約を採算単位に切り出す汎用の手順は事業別PLの作り方にまとめています。

このガイドはその先、契約別・稼働者別の粗利を実際に計算する手順だけに絞ります。稼働率をどう出し、稼働者の人件費をどの基準で契約に配賦し、待機(ベンチ)コストをどう別建てで見るか。算式と計算例で、つまずき所まで具体化します。

厚生労働省の令和6年度集計によると、派遣料金は8時間換算の全業務平均で26,257円、稼働者の賃金は16,735円でした。差額から計算したマージンは約36%ですが、この中身は社会保険料・有給費用・採用や管理の諸経費が大半を占め、最終的な営業利益はごく薄いのが実態です。だからこそ稼働率がわずかに下がるだけで採算は崩れ、稼働者の時間を契約に正しく配賦できるかどうかが採算の見えやすさを直接決めます。

出典厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果(令和6年度報告・速報)」

契約別・稼働者別の粗利を出す4ステップ

粗利は、次の順で段階的に組み立てます。いきなり全費用を精緻に配賦せず、稼働率と直接人件費から固めるのが定石です。

ステップ1|稼働率を算出する(稼働時間÷総労働時間)

最初に、勤怠データから各稼働者の稼働率=請求できる(契約にひもづく)稼働時間 ÷ 総労働時間を出します。総労働時間には、契約に充てた稼働時間と、契約の合間の待機時間の両方が含まれます。稼働率が低いほど、賃金という固定費を売上で回収できていない時間が多い、という読み方ができます。稼働率の定義・分母の取り方は稼働率とはを参照してください。

ステップ2|稼働者人件費を契約別に配賦する

各稼働者の人件費(賃金+社会保険料など)を、ステップ1で把握した稼働実績に応じて契約ごとに配賦します。1人が複数の契約に関わる場合は、契約ごとの稼働時間の比で人件費を割り振ります。契約への配賦人件費=稼働者の人件費 ×(その契約への稼働時間 ÷ その稼働者の総稼働時間)が基本形です。採用・営業・管理部門の人件費は契約に直課できない間接費として、直接稼働時間比などの基準で別途配賦します(配賦の基本は人件費・共通費の配賦の決め方を参照)。

ステップ3|待機(ベンチ)コストを別建てで見える化する

契約にひもづかない待機時間の人件費を、契約別原価とは別建てで金額化します。待機コスト=待機時間 × 時間あたり人件費。無期雇用の稼働者は契約が途切れても賃金が出るため、ここを契約別粗利に紛れ込ませず独立で見ることが重要です。待機コストを稼働者別・チーム別に集計すると、どこで稼働の谷が出ているかが分かります。

ステップ4|契約別・稼働者別の粗利を確定する

契約ごとの売上から、ステップ2で配賦した人件費(直接+間接)を引いて契約別粗利を出します。あわせて、稼働者ごとの稼ぎ(その稼働者が乗った契約からの按分売上)から人件費を引いて稼働者別粗利を出します。ここで初めて「どの契約・どの稼働者で本当に稼げているか」と「待機がどれだけ採算を削っているか」が同じ土俵で見えます。

計算手順を算式で押さえる

各ステップを算式にすると、Excelでもそのまま組めます。

段階 算式
稼働率(%) 請求できる稼働時間 ÷ 総労働時間 × 100
契約への配賦人件費 稼働者の人件費 ×(契約への稼働時間 ÷ 総稼働時間)
待機コスト 待機時間 × 時間あたり人件費
契約別粗利 契約売上 −(直接配賦人件費+間接費の配賦額)
稼働者別粗利 稼働者の按分売上 − 稼働者の人件費

稼働率は「請求できる時間を総労働時間で割る」、人件費は「総稼働時間に対する契約稼働時間の比で割る」のが基本です。待機を分母の総労働時間に含めるか別建てにするかで稼働率と契約別粗利の見え方が変わるため、定義を最初に固めます。

計算例|2契約に関わる稼働者の採算を組み立てる

考え方を具体化します。稼働者Pは月の総労働時間160時間で、賃金+社会保険料を含む人件費が月33万円とします。うち契約Aに96時間(請求単価3,500円/時)、契約Bに40時間(請求単価3,000円/時)稼働し、残り24時間は待機でした。

まず稼働率は、請求できる稼働時間(96+40=136時間)÷総労働時間160時間=85%です。人件費33万円を稼働時間比で配賦すると、契約Aに約23.3万円(96÷136×33万円÷…ではなく総稼働時間136時間に対し96時間分)、契約Bに約9.7万円、待機24時間分は別建てで約4.95万円(待機時間24時間×時間あたり人件費2,062円)です。実務では、まず総稼働時間136時間に対する比でAに96/136・Bに40/136を割り当て、待機分は総労働時間で割った時間単価で別建て化します。

項目 契約A 契約B 待機(別建て)
稼働時間 96時間 40時間 24時間
売上(請求単価×時間) 33.6万円 12.0万円 0円
配賦人件費 約23.3万円 約9.7万円 約4.95万円
粗利(直接人件費控除後) 約10.3万円 約2.3万円 △約4.95万円
粗利率 約30.7% 約19.2%

ここで読み取りたいのは、契約Aは粗利率30.7%と厚いが、契約Bは19.2%と薄く、さらに待機が約5万円の損失として乗っている点です。契約別粗利だけを足すと約12.6万円ですが、待機コスト約5万円を引くと稼働者Pの実質的な貢献は約7.6万円まで縮みます。待機を別建てで見ないと、契約は黒字なのに全社で利益が薄い理由が説明できません。仮に待機24時間を契約Bの増量で埋められれば、Pの採算は大きく改善します。

つまずきやすいポイント

  • 待機コストを契約別粗利に紛れ込ませる — 待機は契約にひもづかない人件費です。契約原価に混ぜると、不採算の正体が見えなくなります。別建てで金額化します。
  • 稼働率の分母をそろえない — 総労働時間で割るか所定時間で割るかで数字が変わります。稼働者間・期間間で比べるなら定義を固定します。
  • 稼働率を上げること自体を目的にする — 100%に近づくほど残業・疲弊・品質低下が起きやすくなります。目指すのは品質と余力を保てる範囲の適正稼働です(稼働率とは参照)。
  • 社会保険料を人件費に含め忘れる — 配賦すべき人件費は賃金だけではありません。社会保険料・有給費用まで含めないと契約別粗利が過大に出ます。
  • 間接費の配賦基準を毎期変える — 採用・営業・管理費の配賦基準が動くと契約間・期間間で比較できません。一度決めたら継続します。

Excel・手作業の限界と、その先

契約別・稼働者別の粗利の最初の一歩はExcelで十分です。稼働率の算出も、人件費の契約配賦も、待機コストの集計もExcelから始められます。ただしExcel運用は、属人化・更新遅延・勤怠と給与の不整合という弱点を抱えやすく、毎月これを契約別・稼働者別に回す段階で限界が出ます。とくに稼働時間の契約への割り振りルールや間接費の配賦基準が担当者の頭の中にあると、その人が抜けた瞬間に再現できなくなります。

ここで多くの会社が勤怠管理ツールや派遣管理システムの導入を考えますが、その多くは稼働や請求は記録できても、賃金・社会保険料といった会計側の人件費や待機コストとはつながっていません。自社の採算単位と配賦基準を先に設計しないまま入れると、テンプレートに業務を無理に合わせることになり、出てくる数字が実態から離れます。順序は「稼働率・人件費配賦・待機把握のルールを固める→その構造を崩さずに運用へ乗せる」です。

AI管理会計ビルダーでの解き方

AI管理会計ビルダーは、この「稼働率の算出→稼働者人件費の契約配賦→待機コストの別建て→契約別・稼働者別粗利」という流れを、会社固有の形でつくります。業務棚卸しで契約・顧客・稼働者・契約形態のどの単位で採算を見るかを設計し、勤怠・給与・請求のデータを契約単位でつなぎ、人件費の配賦と待機コストの可視化をデータ基盤から継続的に回せる形にします。勤怠と給与と請求が分断した状態からでも、契約別・稼働者別の採算の見える化を始められます。

契約別・稼働者別の粗利は、稼働率・人件費配賦・待機コストの設計が土台です。無料診断で、自社の採算が「どこで見えなくなっているか」を可視化できます。

よくある質問

契約別・稼働者別の粗利は、どの順番で計算しますか?
4段階で組み立てます。第1に、勤怠データから各稼働者の稼働率(請求できる稼働時間÷総労働時間)を出します。第2に、稼働者の人件費(賃金+社会保険料など)を、稼働実績に応じて契約ごとに配賦します。第3に、契約にひもづかない待機(ベンチ)時間の人件費を、契約別原価とは別建てで金額化します。第4に、契約ごとの売上から配賦した人件費を引いて契約別粗利を、稼働者ごとの稼ぎから人件費を引いて稼働者別粗利を出します。最初から精緻にせず、直接稼働分の配賦と待機時間の把握から始めると続けやすくなります。
稼働率はどう計算しますか。何を分母に置けばよいですか?
稼働率=請求できる(契約にひもづく)稼働時間÷総労働時間、で計算します。たとえば月の総労働時間が160時間で、うち契約案件に充てた時間が136時間なら稼働率は85%です。残り24時間が待機・社内業務で、ここに賃金という固定費はかかっているのに売上が立っていません。分母を総労働時間にするか所定労働時間にするかで数字が変わるため、稼働者間・期間間で比べるときは定義をそろえます。詳しい考え方は用語集にまとめています。
待機(ベンチ)コストは採算管理でどう扱いますか?
待機コストは、契約にひもづかない稼働者の人件費として、契約別の原価とは別建てで金額化するのが基本です。無期雇用の稼働者は契約が途切れても賃金が発生するため、待機を見えなくしたまま契約別粗利だけを見ると、全社では利益が残らない理由が説明できません。待機による損失の目安は、待機時間×時間あたり人件費で出せます。これを稼働者別・チーム別に集計すると、増員・配置転換・営業強化のどこに手を打つべきかの判断材料になります。
採用・営業・管理部門の人件費(間接費)はどう配賦しますか?
これらは特定の契約に直接ひもづかない間接費なので、配賦基準を決めて契約へ割り当てます。原価計算基準も、複数の対象に共通して発生する間接費は適切な配賦基準で割り当てるという考え方を示しています。実務では直接稼働時間比や配置人数比が定番です。重要なのは、一度決めた基準を頻繁に変えないこと。基準を変えると契約間・期間間で比較できなくなります。配賦の基本手順は配賦ガイドにまとめています。
Excelで契約別・稼働者別の粗利を出してもよいですか?
始めの一歩としては有効です。稼働率の算出も、人件費の契約配賦も、待機コストの集計もExcelから始められます。ただし、勤怠から稼働時間を契約に割り振り、人件費を配賦し、待機を別建てで管理する作業を毎月手で繰り返すと、属人化・更新遅延・勤怠と給与の不整合が起きやすく、継続運用の段階で限界が出ます。まず稼働率・配賦・待機把握のルールという構造を固め、その構造を崩さずに運用へ乗せるのが重要です。