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事業別PLの作り方

全社は黒字なのにどの事業が稼いでいるか分からない、を直す。事業別PL(セグメント別損益)の作り方を、採算単位の切り出し→売上と直接費の紐づけ→共通費の配賦→限界利益・貢献利益・営業利益の段階表示まで、計算例とつまずき所つきで手順化。原価計算基準と中小企業白書2025を基に解説する。

この記事の目次
  1. 事業別PLとは — 全社の損益を「どの事業が稼いでいるか」で組み替える
  2. 事業別PLの作り方(5ステップ)
  3. ステップ1|採算単位を切り出す
  4. ステップ2|売上を採算単位に紐づける
  5. ステップ3|直接費を採算単位に紐づける
  6. ステップ4|共通費を配賦する
  7. ステップ5|段階利益の形にまとめる
  8. 段階利益の組み立て方|どの利益で何を判断するか
  9. 計算例|2事業の事業別PLを組み立てる
  10. つまずきやすいポイント
  11. Excel・手作業の限界と、その先
  12. AI管理会計ビルダーでの解き方
  13. よくある質問
  14. 関連リンク
  15. 出典
この記事の要点AI / AEO 最適化
  • Q1事業別PL(セグメント別損益)の出発点は採算単位の切り出し。事業・部門・店舗・案件など「何別に採算を見るか」を先に決め、そこに売上と費用を紐づける。
  • Q2費用は直接費(その事業だけに紐づく)と共通費(複数事業にまたがる)に分け、直接費はそのまま、共通費だけを配賦する。全額を無理に配賦しない。
  • Q3損益は段階利益で組み立てる。限界利益→貢献利益→事業別営業利益の順に、上の段ほど事業の実力、下の段ほど配賦の影響を含む数字になる。
  • Q4全社が黒字でもどの事業が稼いでいるか分からない状態は、採算単位と費用の紐づけが未設計なことが多い。事業別PLはその設計を形にする作業。

事業別PLとは — 全社の損益を「どの事業が稼いでいるか」で組み替える

事業別PL(事業別損益計算書、セグメント別損益)とは、全社の損益計算書を「事業ごと・部門ごと・店舗ごと・案件ごと」といった採算単位で組み替え、どの事業が利益を生み、どの事業がコストを使っているかを見える形にしたものです。上場企業が有価証券報告書で開示するセグメント情報を、中小企業が自社の意思決定のために、見たい単位で自由に作るイメージです。

多角化した会社で「全社は黒字なのに、どの事業が稼いでいるのか分からない」という状態に陥るのは、多くの場合、採算単位の設計と費用の紐づけが未設計だからです。全社のPLは正しくても、その内訳を事業別に割れていないと、伸ばすべき事業も、見直すべき事業も特定できません。事業別PLは、その内訳を意思決定に使える形にする作業です。

管理会計には法律上の決まった様式がありません。だからこそ「何別に採算を見るか」という採算単位の設計が出発点になります。ここを誤ると、後から出てくる数字が実態と噛み合いません。

中小企業白書2025では、ガバナンス体制を整えた企業ほど「部門・製品別のコスト管理」に取り組む割合が高いと報告されています。事業別・部門別に採算を見える化する体制づくりは、成長やリスク管理の前提になりつつあります。

出典原価計算基準(企業会計審議会)

事業別PLの作り方(5ステップ)

事業別PLは、次の順序で段階的に組み立てます。いきなり精緻な配賦から入らず、紐づけやすいところから固めるのが定石です。

ステップ1|採算単位を切り出す

最初に「何別に採算を見るか」を決めます。事業別・部門別・店舗別・案件別・チャネル別のうち、自社が「どこで稼いでいるかを知りたい単位」を選びます。多角化企業なら事業単位、多店舗なら店舗単位、受託型なら案件単位が起点です。どの業務がどの採算単位に属するかは、業務棚卸しで洗い出します。

ステップ2|売上を採算単位に紐づける

各採算単位の売上を割り当てます。売上はもっとも紐づけやすい項目です。1つの取引が複数事業にまたがる場合は、事前に按分のルールを決めておきます。

ステップ3|直接費を採算単位に紐づける

費用を、その事業だけに紐づく直接費と、複数事業にまたがる共通費に分けます。直接費(その事業の材料費・外注費・専任者の人件費など)は、配賦せずそのまま各事業に計上します。ここまでで、各事業の限界利益・貢献利益まで見えてきます。

ステップ4|共通費を配賦する

複数事業で共有する間接費・本社費は、実態に近い基準で各事業に配賦します。配賦基準の選び方と順番は配賦の決め方で詳しく解説しています。原価計算基準も、間接費は一定の配賦基準で各対象に割り当てると定めています。ここで配賦後の事業別営業利益が出ます。

ステップ5|段階利益の形にまとめる

各事業の損益を、限界利益→貢献利益→事業別営業利益という段階利益の形に並べます。上の段ほど事業そのものの実力、下の段ほど配賦の影響を含んだ数字になります。段階で見ることで、「事業の実力」と「配賦のさじ加減」を切り分けて読めます。

段階利益の組み立て方|どの利益で何を判断するか

事業別PLの肝は、利益を一段ではなく段階で見ることです。それぞれの段がどこまでの費用を引いた数字かを揃えると、誤った撤退・拡大の判断を防げます。

段階利益 計算 何を表すか
売上高 事業の規模
限界利益 売上高 − 変動費 売上が1単位増えたときに残る利益。事業の素の収益力
貢献利益 限界利益 − その事業固有の固定費 共通費を負担する前の、事業単独の利益
事業別営業利益 貢献利益 − 配賦された共通費 共通費まで負担した後の最終的な事業損益

判断の使い分けはシンプルです。事業の実力は限界利益・貢献利益で見て、撤退・存続のような重い判断ほど上の段(限界利益・貢献利益)を重視する。配賦後の事業別営業利益は、配賦基準しだいで動くため、参考情報として読みます。限界利益・貢献利益の考え方は変動費・限界利益の出し方で計算手順までまとめています。

計算例|2事業の事業別PLを組み立てる

考え方を具体化します。A事業(売上6,000万円)とB事業(売上2,000万円)があり、共通費(本社費)が月800万円かかっているとします。直接費を紐づけた後、共通費を売上高比(A75%・B25%)で配賦すると、次のようになります。

項目 A事業 B事業 合計
売上高 6,000万円 2,000万円 8,000万円
変動費 3,600万円 1,400万円 5,000万円
限界利益 2,400万円 600万円 3,000万円
事業固有の固定費 1,200万円 500万円 1,700万円
貢献利益 1,200万円 100万円 1,300万円
配賦された共通費 600万円 200万円 800万円
事業別営業利益 600万円 △100万円 500万円

ここで読み取りたいのは、B事業の事業別営業利益は赤字(△100万円)に見えるものの、貢献利益は100万円のプラスだという点です。B事業は共通費の一部を回収できており、いますぐ撤退すると、その回収分(と按分されていた共通費800万円のうち減らせない部分)をA事業がかぶることになります。配賦後の利益だけで撤退を決めず、貢献利益と「共通費がどれだけ減らせるか」を併せて読むのが、事業別PLの正しい使い方です。

つまずきやすいポイント

  • 採算単位を決めずに数字を分け始める — 紐づけ先が定まらず作業が止まります。先に「何別に見たいか」を決め、それに合わせて科目とセグメントを設計します。
  • 共通費を全額無理に配賦する — 配賦基準しだいで事業の利益が黒字にも赤字にも見えます。配賦前の限界利益・貢献利益で実力を見て、配賦後は参考に。
  • 配賦後の営業利益だけで撤退を判断する — 貢献利益がプラスの事業は共通費を回収しています。撤退判断は上の段の利益で行います。
  • 配賦基準を頻繁に変える — 基準が動くと期間比較ができません。一度決めたら継続し、事業構造が大きく変わったときだけ見直します。

Excel・手作業の限界と、その先

事業別PLの最初の一歩はExcelで十分です。直接費の紐づけも、共通費の配賦試算もExcelから始められます。ただしExcel運用は、属人化(担当者しか触れない)・更新遅延(締めが遅い)・履歴が追えない(誰がいつ何を変えたか分からない)という弱点を抱えやすく、毎月の事業別PLを継続して回す段階で限界が出ます。とくに採算単位の定義や配賦基準が担当者の頭の中にあると、その人が抜けた瞬間に再現できなくなります。

ここで多くの会社が経営管理SaaSの導入を考えますが、SaaSの多くはデータと業務が整っている前提で作られています。採算単位も費用の紐づけも未設計のまま導入すると、テンプレートに自社の事業を無理に合わせることになり、かえって実態から離れた数字が出ます。順序は「棚卸しで採算単位と紐づけを固める→配賦基準を決める→その構造を崩さずに運用へ乗せる」です。

AI管理会計ビルダーでの解き方

AI管理会計ビルダーは、この「採算単位の設計→費用の紐づけ→配賦→段階利益の事業別PL」という流れを、会社固有の形でつくります。業務棚卸しで採算単位と費用の紐づけを洗い出し、直接費と共通費を分け、配賦基準を会社の実態に合わせて設計したうえで、SaaSのテンプレートに縛られない事業別PLをデータ基盤から継続的に回せる形にします。会計が未整備な状態からでも、まず構造を固めるところから始められます。

事業別PLは、採算単位の設計と費用の紐づけが土台です。無料診断で、自社の「どの事業が稼いでいるか見えない度合い」を可視化できます。

よくある質問

事業別PLとセグメント別損益は同じものですか?
実務上はほぼ同じ意味で使われます。事業別PL(事業別損益計算書)は、全社の損益計算書を「どの事業が稼ぎ、どの事業がコストを使っているか」が見える形に組み替えたものです。上場企業の有価証券報告書にあるセグメント情報を、中小企業が自社の意思決定のために自由な単位で作るイメージです。法律上の義務はなく、見たい採算単位に合わせて設計できます。
事業別PLは何から作り始めればよいですか?
採算単位の決定から始めます。事業別・部門別・店舗別・案件別・チャネル別のうち、自社が「どの単位で稼いでいるかを知りたいか」を決めるのが最初の一歩です。単位を決めずに数字を分けようとすると、費用の紐づけ先が定まらず作業が止まります。採算単位の洗い出しは業務棚卸しで行います。
共通費はすべて各事業に配賦すべきですか?
すべてを無理に配賦する必要はありません。複数事業で共有する本社費などの共通費は、配賦基準の取り方しだいで各事業の利益が黒字にも赤字にも見えます。実務では、まず配賦前の限界利益や貢献利益で各事業の実力を見て、共通費を配賦した後の事業別営業利益は参考情報として読むのが安全です。
赤字に見える事業は撤退すべきですか?
配賦後の営業利益だけで判断するのは危険です。その事業の限界利益(売上−変動費)がプラスなら、共通費の一部を回収できており、撤退するとその回収分を他事業がかぶることになります。撤退の判断は、配賦前の限界利益・貢献利益と、共通費がどれだけ減らせるかを併せて見ます。
Excelで事業別PLを作ってもよいですか?
始めの一歩としては有効です。事業別PLはExcelからでも作れます。ただし、毎月の売上・費用の紐づけと配賦を手作業で繰り返すと、属人化・更新遅延・履歴が追えないという弱点が出やすく、継続運用の段階で限界が出ます。まず構造を固め、その構造を崩さずに運用へ乗せるのが重要です。