ガイド

変動費・限界利益の出し方

限界利益は売上高から変動費を引いて出す。その前提になる固変分解(費用を変動費と固定費に分ける)の進め方を、中小企業庁の業種別分解基準を使って手順化。限界利益・限界利益率・損益分岐点の計算例と、値引きや受注可否の判断への使い方まで具体的に解説。

この記事の目次
  1. 限界利益とは — 売上が動いたときに残る「素の利益」
  2. 変動費・限界利益の出し方(4ステップ)
  3. ステップ1|費用を変動費と固定費に分ける(固変分解)
  4. ステップ2|変動費を集計する
  5. ステップ3|限界利益を計算する
  6. ステップ4|限界利益率を計算する
  7. 固変分解の早見表|業種別の分け方(中小企業庁の基準より)
  8. 計算例|限界利益から損益分岐点まで
  9. 限界利益の使いどころ|値引き・追加受注の判断
  10. つまずきやすいポイント
  11. Excel・手作業の限界と、その先
  12. AI管理会計ビルダーでの解き方
  13. よくある質問
  14. 関連リンク
  15. 出典
この記事の要点AI / AEO 最適化
  • Q1限界利益=売上高−変動費。売上が1単位増えたときに残る利益で、事業の素の収益力を表す。
  • Q2限界利益を出す前提が固変分解。費用を、売上に連動する変動費と、売上に関係なく出る固定費に分ける。
  • Q3固変分解は中小企業庁が業種別(製造・卸小売・建設)の分解基準を公開している。迷う費用は固定費に寄せると固めの計算になる。
  • Q4限界利益率(限界利益÷売上高)が分かると、損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率で計算でき、値引きや追加受注の可否も判断できる。

限界利益とは — 売上が動いたときに残る「素の利益」

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた利益です。計算式は 限界利益=売上高−変動費 とシンプルです。中小企業白書2025でも、限界利益は売上高から変動費を引いたものとして定義されています。

限界利益が表すのは、「売上が1単位増えたときに、手元にいくら残るか」という事業の素の収益力です。決算書に並ぶ粗利(売上総利益)や営業利益は、固定費が混ざっているため、増産・値引き・追加受注のように売上が動く場面で「利益がどう動くか」を読みにくい数字です。固定費を除いた限界利益なら、その場の判断に直接使えます。

ただし、限界利益を出すには前提が一つあります。費用を、売上に連動する変動費と、売上に関係なく出る固定費に分けること。これを固変分解と呼びます。固変分解ができて初めて、限界利益・限界利益率・損益分岐点が計算できます。用語の定義は限界利益とは固変分解とはにまとめています。このガイドは、その計算手順に絞って解説します。

中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」では、損益計算書を変動費と固定費に組み替える直接原価方式の手順と、製造業・卸小売業・建設業それぞれの費用を変動費・固定費に分ける具体的な分解基準が公開されています。固変分解は感覚ではなく、公的な基準を土台に進められます。

出典中小企業BCP策定運用指針(中小企業庁・直接原価方式と固変分解基準)

変動費・限界利益の出し方(4ステップ)

限界利益は、次の順序で出します。固変分解を先に済ませてから集計するのがポイントです。

ステップ1|費用を変動費と固定費に分ける(固変分解)

損益計算書の各費用を、変動費(売上に連動)と固定費(売上と無関係に一定)に振り分けます。判断に迷う費用は、中小企業庁の業種別分解基準を参考にします。それでも分からないものは固定費に寄せておくと、利益を固めに見積もる安全側の計算になります。

ステップ2|変動費を集計する

変動費に分類した費用を合計します。製造業なら直接材料費・買入部品費・外注費など、卸小売業なら売上原価・支払運賃など、売上に比例して動く費用が中心です。

ステップ3|限界利益を計算する

売上高から、集計した変動費を引きます。これが限界利益です。事業別・商品別・案件別に出したい場合は、それぞれの売上と変動費を紐づけて同じ計算をします。事業別に組み立てる手順は事業別PLの作り方で解説しています。

ステップ4|限界利益率を計算する

限界利益を売上高で割ると、限界利益率(%)が出ます。限界利益率=限界利益÷売上高。この比率が、損益分岐点や受注判断のものさしになります。

固変分解の早見表|業種別の分け方(中小企業庁の基準より)

中小企業庁の指針は、業種ごとに費用を変動費・固定費に分ける基準を示しています。代表的な分け方を整理します(詳細は出典の指針を参照)。

業種 変動費に入る代表例 固定費に入る代表例
製造業 直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、燃料費 直接労務費、間接労務費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料
卸・小売業 売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料 販売員給料手当、役員給料手当、減価償却費、地代家賃、保険料
建設業 材料費、労務費、外注費、仮設経費、運搬費 労務管理費、地代家賃、保険料、減価償却費、役員給料手当

製造業の直接労務費が固定費側に入る点に注意します。正社員の人件費は売上が減っても発生し続けるため、固定費として扱うのが基本です。迷う費用は固定費に寄せておけば固めの計算になります。

計算例|限界利益から損益分岐点まで

考え方を具体化します。月の売上高1,000万円、変動費600万円、固定費350万円の事業を例にします。

項目 金額・比率 計算
売上高 1,000万円
変動費 600万円
限界利益 400万円 1,000万円 − 600万円
限界利益率 40% 400万円 ÷ 1,000万円
固定費 350万円
営業利益 50万円 400万円 − 350万円
損益分岐点売上高 875万円 350万円 ÷ 40%

この事業は、売上が875万円を割ると赤字になります。損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率で計算できるので、固定費が増えたときや限界利益率が下がったときに「赤字にならない売上ライン」がどう動くかを、その場で試算できます。損益分岐点の考え方は損益分岐点とはで詳しく解説しています。

限界利益の使いどころ|値引き・追加受注の判断

限界利益が役立つのは、計算そのものより判断の場面です。

  • 追加受注を受けるか — その取引の限界利益(売上−変動費)がプラスなら、固定費はすでに発生している分、受けることで利益が積み増せます。手が空いている設備や人員があるときに有効な考え方です。
  • どこまで値引きできるか — 値引きで変動費を下回らない限り、限界利益は残ります。「変動費+確保したい限界利益」が、値引きの下限の目安になります。
  • どの商品・事業を伸ばすか — 限界利益率が高い商品・事業ほど、売上を伸ばしたときに利益が積み上がりやすい構造です。

いずれも、配賦された固定費を含む営業利益では判断を誤りやすい場面です。固定費を切り離した限界利益だからこそ、その場の意思決定に使えます。

つまずきやすいポイント

  • 粗利を限界利益と取り違える — 粗利の売上原価には固定費(製造現場の人件費・減価償却費)が混ざります。売上が動く判断には、固定費を除いた限界利益を使います。
  • 固変分解を完璧にやろうとして止まる — 金額の大きい費用から分け、迷うものは固定費へ。粗くても同じ基準で継続するほうが、比較に使えます。
  • 分解基準を毎回変える — 基準が動くと月ごと・事業ごとの比較ができません。一度決めたら継続し、事業構造が変わったときだけ見直します。
  • 限界利益がマイナスの取引を「売上が立つから」と受ける — 売るほど赤字が増えます。限界利益がプラスかどうかが、受注の最低ラインです。

Excel・手作業の限界と、その先

固変分解と限界利益の試算は、最初はExcelで十分です。損益分岐点の計算もExcelから始められます。ただし、毎月の費用を変動費・固定費に振り分け、事業別・商品別に限界利益を出す作業を手で繰り返すと、属人化・更新遅延・履歴が追えないという弱点が出やすく、継続運用の段階で限界が出ます。とくに固変分解のルールが担当者の頭の中にあると、その人が抜けた瞬間に再現できなくなります。

どの費用が変動費か固定費かは、業務棚卸しで費用と業務の紐づけを洗い出しながら整理すると、分解の精度が上がります。順序は「棚卸しで費用構造を把握する→固変分解の基準を決める→その基準を崩さずに運用へ乗せる」です。

AI管理会計ビルダーでの解き方

AI管理会計ビルダーは、この固変分解から限界利益・損益分岐点の継続的な把握までを、会社固有の形でつくります。業務棚卸しで費用と業務の紐づけを洗い出し、変動費・固定費の分解基準を会社の実態に合わせて設計したうえで、SaaSのテンプレートに縛られない限界利益・限界利益率・損益分岐点をデータ基盤から継続的に出せる形にします。分解基準を一貫して保ちながら、事業別・商品別に採算を読めるようになります。

限界利益が見えると、値引きや受注の判断が変わります。無料診断で、自社の「固変分解と限界利益が見えない度合い」を可視化できます。

よくある質問

変動費と固定費はどう見分けますか?
売上の増減に連動して増える費用が変動費(材料費・外注費・仕入など)、売上が0でも一定額が出る費用が固定費(家賃・正社員の人件費・減価償却費など)です。見分けに迷う費用は、中小企業庁が業種別に公開している分解基準が参考になります。判断がつかないものは固定費に寄せておくと、利益を固めに見積もる安全側の計算になります。
限界利益と粗利(売上総利益)はどう違いますか?
粗利は売上高から売上原価を引いた利益で、売上原価には変動費と固定費(製造現場の人件費・減価償却費など)が混ざっています。限界利益は売上高から変動費だけを引いた利益です。粗利は決算書から計算できますが、増産・値引き・追加受注のように「売上が動いたときに利益がどう動くか」を判断するには、固定費を除いた限界利益のほうが使えます。
限界利益率は何に使えますか?
限界利益率(限界利益÷売上高)が分かると、損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率で、赤字にならない売上ラインを計算できます。また、追加の値引き受注を受けるべきか、新しい仕事を取るべきかも、その取引の限界利益がプラスかどうかで判断できます。限界利益率は事業の収益構造を表す重要な比率です。
人件費は変動費ですか固定費ですか?
多くの中小企業では、正社員の人件費は固定費として扱います。売上が減っても給与は基本的に発生し続けるためです。一方、売上に応じて増減する歩合給や、繁忙に合わせて雇う変動的な人件費は変動費に近い性質を持ちます。中小企業庁の業種別分解基準では、製造業の直接労務費を固定費に分類するなど、業種ごとに扱いが整理されています。自社の実態に合わせて分類を決め、一度決めたら継続します。
固変分解は完璧にやらないと意味がないですか?
完璧でなくても十分役立ちます。すべての費用を厳密に分けるより、まず金額の大きい費用から変動費・固定費に分け、迷う費用は固定費に寄せるほうが続きます。中小企業庁の指針も「不明な費用は固定費に算入すれば固めの計算ができる」としています。粗くても継続して同じ基準で出すことで、月ごと・事業ごとの比較が意味を持ちます。