ガイド

飲食のFLコスト計算と本部費の店舗配賦のやり方

飲食・多店舗でFLコスト率を店舗別に出す手順と、シフト人件費を店舗へ紐づける方法、本部費(販促・セントラルキッチン・本社管理)を売上比や席数比で各店へ配賦する具体手順を計算例つきで解説。原価計算基準と公庫指標を基に、店舗別の黒字ラインを出す進め方をまとめる。

この記事の目次
  1. このガイドの守備範囲|FLと本部費を「店舗別に分ける手順」に絞る
  2. ステップ1|FLコスト率を店舗別に算出する
  3. ステップ2|シフト人件費を店舗別に紐づける
  4. ステップ3|店舗固定費を店舗別に集計する
  5. ステップ4|本部費を各店へ配賦する
  6. 計算例|3店舗にFLと本部費を割る
  7. つまずきやすいポイント
  8. Excel・手作業の限界と、その先
  9. AI管理会計ビルダーでの解き方
  10. よくある質問
  11. 関連リンク
  12. 出典
この記事の要点AI / AEO 最適化
  • Q1FLコスト率は店舗別に出して初めて使える。店舗ごとに食材費(Food)と人件費(Labor)を売上に紐づけ、FL÷店舗売上で算出する。全社合算では赤字店が黒字店に隠れる。
  • Q2シフト人件費は、勤怠の所属店舗コードで各店に直課し、複数店を回るヘルプや社員は勤務時間割合で按分する。これがLabor側の精度を決める。
  • Q3本部費(販促・セントラルキッチン・本社管理)は特定店に直接ひもづかない共通費。売上比・席数比・客数比など実態に近い基準で各店へ配賦し、店舗別営業利益まで出す。
  • Q4進め方はFL→店舗固定費→本部費配賦の順。配賦後の店舗別営業利益だけで撤退を判断せず、本部費配賦前の店舗貢献利益で店の実力を見るのが安全。

このガイドの守備範囲|FLと本部費を「店舗別に分ける手順」に絞る

飲食・多店舗で「全社では回っているのに、どの店が黒字か曖昧」になる構造的な理由と、業界平均ベンチマーク(食堂・レストランはFL相当が売上の約76%、損益分岐点比率は平均133%)は飲食・多店舗の店舗別採算を直すで解説しています。FLコスト・FL比率そのものの定義や目安(FL比率は売上の60%以下、Food30〜35%・Labor20〜25%)はFLコストとはに、配賦の一般的な進め方は人件費・共通費の配賦の決め方にまとめています。

このガイドは、それらを前提に、飲食固有の「店舗別にFLコスト率を出し、本部費を各店へ配賦する」手順だけを具体化します。算式・店舗別の紐づけ方・配賦基準の選び方・計算例・つまずき所が中心です。

ステップ1|FLコスト率を店舗別に算出する

FLコスト率は、店舗ごとに食材費(Food)と人件費(Labor)を売上に対応させて出します。

FLコスト率(店舗)=(その店の食材費 + その店の人件費)÷ その店の売上高

手順は3つです。

  1. 食材費(Food)を店舗別に集計する — 仕入システムの店舗コードで、その月にその店が使った食材費を集計します。仕入額そのままではなく、棚卸しで月初・月末在庫を調整した「使った分」が原価です(食材費=月初在庫+仕入−月末在庫)。
  2. 人件費(Labor)を店舗別に集計する — 勤怠・シフトから、その店で働いた人の人件費を集計します(次のステップ2で詳述)。
  3. 店舗の売上で割る — 同じ店のPOS売上で割って、その店のFLコスト率を出します。

全社合算のFLコスト率を1つ出しても意味は薄く、店舗別に出すからこそ「原価の重い店」「人件費の重い店」が分離して見えます。

日本政策金融公庫の調査では、食堂・レストランは食材費が売上の約37%、人件費率が39.5%で、FL相当が売上の約76%にのぼり、損益分岐点比率は平均133.0%です。FLが売上の大半を占める以上、店舗別にFLコスト率をそろえることが、店舗別採算を見る最初の一歩になります。

出典原価計算基準(企業会計審議会)

ステップ2|シフト人件費を店舗別に紐づける

Labor側の精度は、シフト人件費をどう店舗に割るかで決まります。飲食はパート・アルバイトの比率が高く、人が複数店を行き来するため、ここがつまずきやすい工程です。

スタッフの働き方 店舗への割り当て方
1店舗専属(社員・パート・バイト) 勤怠の所属店舗にそのまま直課する
複数店を回るヘルプ・応援 各店での勤務時間の割合で人件費を按分する
兼務社員(特定の数店を担当) おおまかな勤務時間割合で各店に配分する
エリアマネージャー・統括 直課が難しければ本部費に含め、後段で配賦する

按分の例を示します。ある社員(月額人件費40万円)が当月、A店に80時間・B店に40時間勤務したなら、人件費を2対1で配分し、A店に約26.7万円・B店に約13.3万円を計上します。割合は完璧を狙わず、勤怠の実績時間からおおまかに決めて継続するのが実務です。配賦の一般原則は配賦の決め方を参照してください。

ステップ3|店舗固定費を店舗別に集計する

家賃、水道光熱費、店舗のリース料・減価償却費は、その店で発生する費用なので、店舗別に直課できます。請求書や契約が店舗単位になっているため、ここは比較的迷いません。FLと店舗固定費まで店舗別にそろうと、本部費を配賦する前の「店舗貢献利益」が見えます。

店舗貢献利益=店舗売上 − FL(食材費+人件費)− 店舗固定費(家賃・水道光熱費等)

この店舗貢献利益が、その店単独の実力です。本部費を乗せる前のこの段階で、まず店の良し悪しを読みます。

ステップ4|本部費を各店へ配賦する

本部費(販促費・セントラルキッチン原価・本社管理費)は、特定店に直接ひもづかない共通費です。費目ごとに、発生の実態に最も近い基準を選んで各店へ配賦します。原価計算基準も、間接費は一定の配賦基準で各対象へ割り当てると定めています。

本部費の費目 よく使う配賦基準 選ぶ理由
全店共通の販促・広告 売上比 販促の恩恵は売上規模に概ね比例する
特定店の販促 その店に直課 対象店が特定できる費用は配賦しない
セントラルキッチン原価(仕込み品) 各店の引き取り数量・金額比 使った分だけ各店の食材費に乗る
本社管理費(経理・人事・本部家賃) 売上比・店舗数で均等 規模に応じた負担として説明しやすい
エリア統括の人件費 担当店の売上比・店舗数 統括の対象範囲に近い

セントラルキッチン原価は、まず各店が引き取った仕込み品の金額を店舗のFood(食材費)に振り替え、CK自体に残る固定費(人件費・設備)を本社管理費として別途配賦する二段構えにすると、CKの稼働効率と店舗採算を切り分けて読めます。本部費まで配賦して、初めて店舗別営業利益(店舗貢献利益−配賦された本部費)が出ます。

計算例|3店舗にFLと本部費を割る

考え方を具体化します。本部費が月300万円(うち全店共通販促120万円、本社管理費180万円)、3店舗の数字が次のとき、販促と管理費をそれぞれ売上比で配賦します。

項目 A店 B店 C店 合計
売上高 800万円 500万円 300万円 1,600万円
食材費(F) 280万円 185万円 117万円 582万円
人件費(L) 312万円 205万円 132万円 649万円
FLコスト率 74.0% 78.0% 83.0% 76.9%
店舗固定費 140万円 90万円 70万円 300万円
店舗貢献利益 68万円 20万円 △19万円 69万円
配賦本部費(売上比) 150万円 94万円 56万円 300万円
店舗別営業利益 △82万円 △74万円 △75万円 △231万円

この例で読み取りたいのは、C店は店舗貢献利益の段階ですでにマイナス(△19万円)で、FLコスト率も83.0%と業界平均(約76%)より重く、店単独で固定費を回収できていない点です。一方A店・B店は店舗貢献利益がプラスで、本部費を配賦すると営業利益は赤字に見えますが、これは本部費の総額が売上規模に対して重いことを示しており、各店の実力とは別問題です。店の良し悪しは配賦前の店舗貢献利益で、本部費の重さは全社の問題として、分けて読むのが要点です。

つまずきやすいポイント

  • 全社合算のFLコスト率で満足する — 店舗別に割らないと、原価の重い店も人件費の重い店も平均に埋もれます。FLは必ず店舗別に出します。
  • 仕入額をそのまま食材費にする — 月初・月末の在庫を調整しないと、仕込みや発注のタイミングでFが上下します。棚卸しで「使った分」に直します。
  • ヘルプ・兼務者の人件費を放置する — 複数店を回るスタッフを按分しないと、Labor側が店舗間でずれます。勤務時間割合で割るだけでも精度が上がります。
  • 配賦基準を毎月変える — 売上比と席数比を行き来すると店舗間・期間間の比較ができません。一度決めて継続し、業態構成が変わったときだけ見直します。
  • 配賦後の店舗別営業利益だけで撤退を決める — 配賦前の店舗貢献利益がプラスの店は本部費を回収しています。撤退は配賦前の利益で判断します。

Excel・手作業の限界と、その先

店舗別FLと本部費配賦の試算は、最初はExcelで十分です。ただし、毎月POS(売上)・シフト(人件費)・仕入(食材)を店舗単位で突き合わせ、ヘルプの按分や本部費配賦を手で繰り返すと、属人化・更新遅延・履歴が追えないという弱点が出て、店舗数が増えるほど継続運用が苦しくなります。とくに配賦基準と紐づけのルールが担当者の頭の中にあると、その人が抜けた瞬間に再現できなくなります。

どの費用がどの店舗・時間帯に紐づくかは、業務棚卸しでPOS・シフト・仕入の費用と店舗の対応を洗い出すと、配賦の精度が上がります。順序は「棚卸しで店舗別の費用構造を把握する→FLと本部費の配賦基準を決める→その基準を崩さずに運用へ乗せる」です。

AI管理会計ビルダーでの解き方

AI管理会計ビルダーは、この「店舗別FLの集計→シフト人件費の店舗配賦→本部費配賦→店舗別営業利益」の前工程を、会社固有の形でつくります。業務棚卸しでPOS・シフト・仕入の紐づけを洗い出し、ヘルプの按分や本部費の配賦基準を会社の店舗構造に合わせて設計したうえで、飲食向けSaaSのテンプレートに縛られない店舗別・時間帯別の採算をデータ基盤から継続的に出せる形にします。配賦基準を一貫して保ちながら、店舗別の黒字ラインを安定して読めるようになります。

FLと本部費配賦を店舗別に組めると、どの店が本部コストまで含めて黒字かが見えます。無料診断で、店舗別採算の配賦の起点を洗い出せます。

よくある質問

FLコスト率は店舗ごとにどう計算しますか?
店舗別に、その店の食材費(Food)と人件費(Labor)を合計し、その店の売上高で割ります。式はFLコスト率=(店舗の食材費+店舗の人件費)÷店舗の売上高です。ポイントは、食材費を仕入システムから店舗コードで集計し、人件費を勤怠・シフトから店舗別に集計して、同じ店舗の売上と対応させること。全社で合算したFLコスト率では、原価の重い店と軽い店が打ち消し合い、どの店が崩れているか見えません。FLコスト率の目安や定義は用語解説にまとめています。
複数店舗を兼務する社員やヘルプの人件費はどう店舗に割りますか?
1店舗専属のスタッフは勤怠の所属店舗にそのまま直課します。複数店を回る社員やヘルプは、各店での勤務時間の割合で人件費を按分します。たとえばある社員が当月A店に80時間・B店に40時間勤務なら、その人件費を2対1でA店・B店に配分します。エリアマネージャーのように店舗を統括する立場の人件費は、直課が難しければ本部費に含め、後段の本部費配賦でまとめて各店へ割る扱いにします。割合は完璧でなくてよく、一度決めた基準を継続するのが重要です。
本部費(本社費)は店舗にどう配賦すればよいですか?
本部費は特定店に直接ひもづかない共通費なので、一定の配賦基準で各店へ割ります。販促費は対象店が特定できれば直課し、全店共通の販促は売上比など、セントラルキッチン原価は各店の仕入額や食数比、本社管理費は売上比や店舗数で均等、というように費目ごとに実態に近い基準を選びます。原価計算基準も、間接費は一定の配賦基準で各対象へ割り当てると定めています。重要なのは基準を頻繁に変えないこと。基準が動くと店舗間・期間間の比較ができなくなります。
セントラルキッチン(CK)の原価はどう各店に割りますか?
セントラルキッチンで作った仕込み品・半製品は、各店が引き取った数量や金額に応じて店舗のFood(食材費)に振り替えるのが基本です。各店への出荷数量や出荷金額を記録できれば、それを配賦基準にして店舗別の食材費へ正確に乗せられます。CK自体の固定費(人件費・設備)まで店舗に乗せるかは、まず仕込み品の引き取り額で配賦し、残る固定費を本部費として後段で配賦する二段構えにすると、CKの稼働効率と店舗採算を切り分けて読めます。
配賦後に赤字に見える店舗は閉めるべきですか?
本部費を配賦した後の店舗別営業利益だけで撤退を判断するのは危険です。その店の本部費配賦前の利益(店舗貢献利益=売上−FL−店舗固定費)がプラスなら、その店は本部費の一部を回収できており、閉めるとその回収分を残る店がかぶります。配賦基準を売上比から席数比に変えるだけでも各店の負担額は動くため、撤退判断は配賦前の店舗貢献利益と、店を閉めて本部費がどれだけ減らせるかを併せて見ます。