Q1メニュー別の理論原価率は、レシピ(標準原価)から1品ごとに食材原価を積み上げ、その品の売価で割って出す。これがメニュー単位の採算を見る出発点で、店舗のFLコスト率とは別の論点。Q2理論原価率と実際原価率の差がロス(廃棄・過剰盛り・歩留り低下・盗難)。理論が30%なのに実際が35%なら、その5ポイントがどこで漏れているかを工程で切り分ける。Q3メニューエンジニアリングは、各品を売上数量(人気)と1品あたり貢献利益(粗利額)の2軸・4象限で分類する。Star(高人気・高粗利)/Plowhorse(高人気・低粗利)/Puzzle(低人気・高粗利)/Dog(低人気・低粗利)。Q4判断は象限ごとに変える。Starは維持・露出強化、Plowhorseは値づけ・原価改善、Puzzleは見せ方・推奨で数を伸ばす、Dogは改廃を検討。原価率だけでなく貢献利益額で見るのが要点。
このガイドの守備範囲|メニュー1品ごとの原価と貢献を出す手順に絞る
飲食・多店舗で「全社では回っているのに、どの店が黒字か曖昧」になる構造や業界平均は飲食・多店舗の店舗別採算を直すに、FLコスト・FL比率そのものの定義や目安はFLコストとはにまとめています。店舗別にFLコスト率を出し、本部費を各店へ配賦する手順は飲食のFLコスト計算と本部費の店舗配賦のやり方で解説しています。
このガイドはそれらと論点を分けます。店舗配賦のガイドが「店舗という単位の採算」を扱うのに対し、ここで扱うのはメニュー1品という単位の原価と貢献です。レシピから理論原価率を出し、実際原価率との差(ロス)を読み、売れ筋×粗利の4象限で値づけと改廃を判断する——この一連の手順に絞ります。
ステップ1|レシピ(標準原価)からメニュー別の理論原価率を出す
メニュー別原価率は、1品ごとにレシピの食材原価を積み上げて売価で割ります。
メニュー別原価率(理論)=そのメニューの食材原価 ÷ そのメニューの売価
手順は3つです。
- レシピを標準化する — 1品に使う食材の分量と単価を決めて、その品の標準原価を固定します。たとえばパスタなら麺・ソース・具材・オイルの分量×仕入単価を合計します。これが原価標準で、原価計算基準も、あらかじめ定めた原価標準と実際の差を分析する標準原価計算の考え方を示しています。
- 売価で割って理論原価率を出す — 標準原価をその品の売価で割ります。食材原価300円・売価1,000円なら理論原価率は30%です。
- メニュー間で横並びにする — 全品を同じやり方でそろえると、原価率の重い品・軽い品が一覧で見えます。
ここで出るのは「レシピどおりに作れた場合」の理論値です。実際にかかった原価とは別で、その差は次のステップで読みます。
日本政策金融公庫の調査では、食堂・レストランの売上高総利益率は63.2%で、裏返すと売上原価(食材費中心)は約37%にのぼります。食材費が売上の大きな部分を占める以上、メニュー1品ごとに原価を積み上げて理論原価率をそろえることが、メニュー別の採算を読む最初の一歩になります。
ステップ2|実際原価率との差(ロス)を読む
理論原価率は「レシピどおりなら」の数字です。実際にその期間で使った食材費を売上で割った実際原価率と比べると、差が見えます。
ロス=実際原価率 − 理論原価率
| ロスの主な発生源 | 内容 |
|---|---|
| 廃棄ロス | 仕込みすぎ・賞味期限切れ・売れ残りの廃棄 |
| 過剰盛り(ポーションオーバー) | レシピより多く盛る・量が安定しない |
| 歩留りの低下 | 下処理での無駄・カットロスが想定より大きい |
| 棚卸し・発注の誤差 | 発注ロットが大きく在庫が滞留する |
たとえば理論原価率30%のメニュー群で実際原価率が35%なら、差の5ポイントがこれらで漏れています。ロスはメニュー別原価率の精度を崩す最大要因なので、差が大きい品や時期を特定し、仕込み量・ポーション・発注ロットのどこに原因があるかを工程で切り分けます。値上げをせずに利益を改善できる余地は、多くがこの差の中にあります。
ステップ3|売れ筋×粗利の4象限で分類する(メニューエンジニアリング)
原価率だけ見ても、改廃や値づけの判断はできません。メニューエンジニアリングは、各品を売上数量(人気)と1品あたり貢献利益(売価−食材原価)の2軸で4象限に分けます。境目は、その店の平均販売数と平均貢献利益で引きます。
| 象限 | 人気(販売数) | 貢献利益(1品の粗利額) | 性格 |
|---|---|---|---|
| Star(看板) | 高い | 高い | 店の柱。数も出て1品の粗利も大きい |
| Plowhorse(売れ筋・薄利) | 高い | 低い | よく出るが1品の粗利が薄い |
| Puzzle(埋もれた高粗利) | 低い | 高い | 粗利は大きいが数が出ていない |
| Dog(不振) | 低い | 低い | 数も粗利も小さい |
ここで見るのは原価率の高低ではなく、1品が稼ぐ貢献利益額と売れている数の組み合わせです。原価率がやや高くても、貢献利益額が大きく数も出る品は、立派なStarになり得ます。貢献利益という考え方は限界利益とはも参照してください。
ステップ4|象限ごとに値づけ・改廃を判断する
打ち手は象限で変えます。一律の値上げや一律のメニュー削減ではなく、位置に応じて使い分けます。
| 象限 | 打ち手の方向 |
|---|---|
| Star | 露出を増やし品質を維持する。看板として守る |
| Plowhorse | 数が出るぶん影響大。段階的な値づけ見直し・原価改善で1品の貢献利益を上げる |
| Puzzle | 見せ方・写真・スタッフ推奨で販売数を伸ばせないか試す |
| Dog | 改廃を検討。看板役割や食材の共通利用がなければ外す候補 |
Plowhorseは「数が出るのに薄利」なので、わずかな値づけ改善や原価改善でも店全体への効きが大きい象限です。Puzzleは「もったいない高粗利」で、見せ方を変えるだけで数が伸びることがあります。Dogは、ほかの品と食材を共有していないか、看板としての役割がないかを確認したうえで改廃を判断します。
計算例|4品をメニューエンジニアリングで分類する
考え方を具体化します。ある店の主力4品が次のとき、平均販売数と平均貢献利益を基準に4象限へ分けます。
| メニュー | 売価 | 食材原価 | 原価率 | 貢献利益(1品) | 月間販売数 | 月間貢献利益 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A・看板パスタ | 1,200円 | 360円 | 30.0% | 840円 | 600食 | 504,000円 |
| B・日替りランチ | 900円 | 360円 | 40.0% | 540円 | 700食 | 378,000円 |
| C・限定肉料理 | 1,800円 | 630円 | 35.0% | 1,170円 | 120食 | 140,400円 |
| D・サイドサラダ | 500円 | 200円 | 40.0% | 300円 | 90食 | 27,000円 |
この4品の平均販売数は約378食、平均貢献利益(1品)は約713円です。これを基準にすると、Aは販売数も貢献利益も平均超でStar、Bは販売数は多いが1品の貢献利益が平均未満でPlowhorse、Cは販売数は少ないが1品の貢献利益が最大でPuzzle、Dは販売数も貢献利益も平均未満でDogと読めます。ここで読み取りたいのは、原価率が最も低い(30%)AがStarである一方、原価率が同じ40%でもBとDで打ち手が真逆になる点です。Bは数が出るので値づけ・原価改善で貢献利益を底上げ、Dは数も粗利も小さいので改廃を検討します。原価率の順位ではなく、人気×貢献利益の位置で判断するのがメニューエンジニアリングの要点です。
つまずきやすいポイント
- 原価率(%)だけで良し悪しを決める — 原価率が低くても貢献利益額が小さく数も出なければ店への寄与は限られます。貢献利益額×販売数で見ます。
- 理論原価率だけで満足する — レシピどおりに作れている保証はありません。実際原価率との差(ロス)を必ず突き合わせます。
- ポーションを標準化しない — 盛り付け量が人で変わると、理論原価率そのものが崩れます。レシピの分量を固定します。
- 一律の値上げ・一律の削減で対応する — 象限ごとに打ち手は逆になります。Plowhorseは改善、Puzzleは販促、Dogは改廃と分けます。
- 看板役割・食材共通利用を見ずにDogを切る — 集客の看板や他メニューと食材を共有する品は、貢献利益が小さくても残す価値があります。
Excel・手作業の限界と、その先
メニュー別の理論原価とメニューエンジニアリングの試算は、最初はExcelで十分です。レシピの標準原価を組み、POSの販売数と掛け合わせれば4象限は描けます。ただし、メニュー改定や仕入単価の変動のたびに全品の標準原価を引き直し、POSの販売実績と毎月突き合わせ、理論と実際の差まで追う作業を手で回すと、属人化・更新遅延・履歴が追えないという弱点が出ます。とくにレシピと仕入単価の対応が担当者の頭の中にあると、その人が抜けた瞬間に再現できなくなります。
どの食材がどのメニューに紐づくかは、業務棚卸しでレシピ・仕入・POSの対応を洗い出すと、メニュー別原価の精度が上がります。順序は「棚卸しでレシピと仕入・販売の対応を把握する→理論原価とロスの算定ルールを決める→そのルールを崩さずに運用へ乗せる」です。
AI管理会計ビルダーでの解き方
AI管理会計ビルダーは、この「レシピの標準原価→メニュー別理論原価率→実際との差(ロス)→4象限での判断」の前工程を、会社固有の形でつくります。業務棚卸しでレシピ・仕入単価・POS販売実績の紐づけを洗い出し、メニュー別の理論原価と貢献利益、実際原価との差を、飲食向けSaaSのテンプレートに縛られないデータ基盤から継続的に出せる形にします。仕入単価やメニューが変わっても、メニュー別の採算と改廃判断を安定して回せるようになります。
メニュー別の理論原価とロス、貢献利益が品ごとに見えると、値づけと改廃の判断が変わります。無料診断で、メニュー別採算の見える化の起点を洗い出せます。
よくある質問
メニュー別の原価率はどう計算しますか?
理論原価率と実際原価率の差は何を意味しますか?
メニューエンジニアリングの4象限はどう分けますか?
4象限ごとにどう手を打てばよいですか?
原価率が低いメニューを増やせば利益は増えますか?
関連リンク
- 業種別: 飲食・多店舗の「店舗別の黒字ラインが見えない」を直す
- ガイド: 飲食のFLコスト計算と本部費の店舗配賦のやり方 / 変動費・限界利益の出し方 / 業務棚卸しのやり方
- 用語: FLコストとは / 限界利益とは / 貢献利益とは / 損益分岐点とは
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